『潜水服は蝶の夢を見る』左目だけで広がる世界


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★★★☆☆

左目の瞬きだけで一冊の本を綴った編集者がいる。彼は息子とのドライブ中に突如、脳梗塞に襲われた。奇跡的に目覚めたが、十分に動かせるのは左目だけになった。

そんな究極的に不自由な環境の中で、ジャン・ドミニク・ボビーは自らの過去を書き続けた。その自伝は著書と同名のタイトル『潜水服は蝶の夢を見る』として映画化された。左目だけの世界をたんたんと描き続けるこの映画は、無理に感動を押し付けようなことをせず、苦しくも心に響いてくる映画に仕上がっている。

潜水服は蝶の夢を見る


深い眠りから目覚めたジャン・ドミニク・ボビーはいつもと違うと感じていた。意識はもうろうとし、視界もはっきりしない。どうやらここは病院のようだ。自分の声も相手に届いていないようだ。

ボビーは脳梗塞で倒れ、昏睡状態から目覚めたばかりだった。動かせるのは左目のまぶただけ。次第に状況を飲み込んだボビーは、言語療法士のすすめで瞬きだけで会話するすべを身に付ける。

病気になる前のボビーはフランスの華やかなファッション誌「エル」の編集長として生活を送っていたのだった。不自由になったボビーは絶望の淵に立たされながらも瞬きだけで自伝を綴り始める。そして、自伝が出版された直後にこの世を去ったのだった。

ボビーの症状は「ロックト・イン・シンドローム」(閉じ込め症候群)と言われるらしい。意識は冴えているが、不自由な肉体という檻(おり)に閉じ込められたような状態になる。その世界はあたかも潜水服を着たようなものなのかもしれない(潜水服もロックト・イン・シンドロームもどちらも体験したことはないが)。

この映画も左目だけで見える1人称の世界で描かれる。「ロックト・イン・シンドローム」をそのまま体験するかのような描き方で、見る者は不思議な感覚に捉われる。見方を変えれば、たんたんと不自由な世界と独白が続いていくわけで、それだけでもボビーが決して楽しい毎日ではなかっただろうと推測できる。しかも以前の彼は、これでもかというほど華やかな世界にいたのだ。

そして、自伝『潜水服は蝶の夢を見る』を書き上げたところで、映画は幕を閉じる。

実にたんたんとした描き方に感動よりも苦しさを覚えたのは自分だけだろうか? 感動を押し付けないスタイルがとても印象的だ。それもあって、ジャン・ドミニク・ボビーのことを一生忘れることはないだろう作品となっている。

潜水服は蝶の夢を見るの監督
ジュリアン・シュナーベル
潜水服は蝶の夢を見るの原作
ジャン=ドミニク・ボービー
潜水服は蝶の夢を見るの出演
マチュー・アマルリック
マリー=ジョゼ・クローズ
マックス・フォン・シドー

『潜水服は蝶の夢を見る』左目だけで広がる世界, 4.0 out of 5 based on 1 rating

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