『ダンサー・イン・ザ・ダーク』鬼才ほとばしる
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映画の視聴環境がDVDなどプライベートなものになっていくと、自分の好み以外の映画を見る機会を逃しがちになる。今回友人がいたく心酔していた映画を見ることができた。しかもこれがさすがな出来なのだ。
その映画はビョーク主演、ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。2000年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した評価の高い作品だ。手持ちカメラによるドキュメンタリーのような演出、時折り挿入される抑制の効いたミュージカル、そして、悲しすぎるストーリー。この感覚はそう簡単に味わえる映画じゃない。
チェコからアメリカに移民してきたセルマは、息子のジーンとトレーラー生活をしていた。工場勤めに内職と貧乏ながらも女手一つで息子を育てる大変さはあったが、周囲の友人に恵まれ生活は満ちたりていた。だが、大きな悩みを抱えていた。セルマは先天性の病気により近いうちに失明するのだ。徐々に視力が失われてきており、その時は近い。やっかいなことに息子のジーンにも遺伝している。
周囲には父親に仕送りをしていると周囲に話していたお金も、実は息子の目の手術代のために少しずつ貯金していたのだ。住居を提供してくれた大家のビルから借金を打ち明けられた際に、彼を信じるセルマはその秘密を話してしまう。ビルはそのお金を貸してもらえないかと頼むが、彼女は断るしかなかった。
ほとんどの視力を失ったセルマはついに工場で事故を起こして解雇される。失意のうちに家に戻ると、貯めてきたお金もなくなっている。ビルが盗んでいたのだ。お金を取り戻そうともみ合っているうちに、ビルを撃ち抜いてしまう。そして「金を返して欲しければ殺せ」とすごむビルを殺してしまう。
そしてセルマは逮捕される――。
この不思議な雰囲気はなんなんだろうか。手持ちカメラによるカメラワークが重く悲しいストーリーをより現実的なものに感じさせる。時折り挿入されるミュージカルはセルマの想像の世界を描き、ものすごく映画的なのだが、こちらも抑制が効いた演出で自然なのだ。しかもこの派手さのなさがセルマの人柄と気持ちをうまく表現するのに成功している。セルマにとってミュージカルは唯一の心の支えなのだ。
この物語の悲しさは結末に最高潮に達する。これはもう、誰にもどうしようもない残酷なもの。涙しかない、というのはこういうことをいうのだろう。現実的なストーリーに演出されているだけに、その衝撃は脱力感さえ覚えるほどだ。
ラース・フォン・トリアーとビョークという組み合わせは、恐ろしいほどの傑作を生み落した。
ダンサー・イン・ザ・ダークの監督・脚本
ラース・フォン・トリアー
ダンサー・イン・ザ・ダークの出演
ビョーク
デヴィッド・モース
ピーター・ストーメア
カトリーヌ・ドヌーヴ
ウド・キア
ステラン・スカルスガルド






















