『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』現代アメリカの象徴「血」と「石油」


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映画の評価(5点満点)

★★★★☆

プアーです。難解な映画を見るたびに残念な気持ちで一杯になり神をうらむのだが、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も僕の理解力を上回る作品だった。拓紀の経験や宗教的な洗礼を受けていない日本人にとって、そもそも欧米人の価値観を心根の部分で理解することはできないのかもしれない。それくらい深い断絶を感じさせる作品だ。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド


『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は主人公がすべてを犠牲にして石油で利得を得ていきますよ、というストーリー。本作のタイトルになってるブラッドは文字通り『血』のことで、より正確にいえば『血縁』と『石油』のダブルミーイングになっている。血縁は人間的なつながりやヒューマニズムを意味し、石油を欲望を意味してるそうだ。

主人公は即物的な成功を夢見て「血」を犠牲にして「石油」を追い求め、成功街道を突っ走る。言うまでもなく、現代アメリカの象徴である。そして現代のアメリカがそうであるように、この映画も決してハッピーとはいえない結末を迎える。

現代アメリカの象徴といえば、若い宣教師が出てくるのだが、キリスト教が主人公の行動を抑制するための装置(良心としての機能)を完全に失っており、むしろ主人公側(利得を渇望する俗世側)に置かれてるのも面白い。

もちろんこれには根拠があり、これが公開された2009年はアメリカがイラク戦争を展開していた年にあたる。つまり、キリスト教を指示母体とするブッシュ政権がブイブイ言わしていたころだからだ。ここらの味付けはいかにも現代アメリカらしく、過去のそれだったらなかなか出てこない設定だと思う。

軽薄で特撮技術ばかりが注目されてきたハリウッド映画だが、ここ最近の急速な不景気によって自分を冷静に見れる時間と余裕が少し出てきたようである。その結果『ダークナイト』や本作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などの骨太な映画がガンガン出てくるのは、やはりアメリカの懐の深さなのだろう。

まあ、このような前知識がなくても本作の主人公の演技は圧倒的なので、その演技を見るだけでも一見の価値はある。焼肉食ってパワーつけてから見ましょう。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの監督・製作・脚本
ポール・トーマス・アンダーソン
ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの原作
アプトン・シンクレア
ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの出演
ダニエル・デイ=ルイス
ディロン・フレイジャー
ポール・ダノ
ケビン・J・オコナー
キアラン・ハインズ

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』現代アメリカの象徴「血」と「石油」, 4.3 out of 5 based on 3 ratings

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