『シャイニング』恐怖度No.1でも説明不足


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映画の評価(5点満点)

★★★★☆

シャイニング』を初めて見たときは子供だったせいか、難解で気持ち悪い映画だと思っていた。今見てみると、説明不足なところが多いように思う。ホラー映画の傑作として名高い『シャイニング』だが、スティーブン・キングが不快に思った理由も分からないでもない。

シャイニング

コロラドのオーバールック・ホテルは多くの有名人が訪れる伝統のあるホテルだ。ロッキー山の上にあるこのホテルは、冬場になると積雪のため閉店せざるを得ない。小説家を目指すジャック・トランスはこの期間のホテルの管理人として求職してくる。ホテルの支配人は、かつてこのホテルの冬季管理人だったグレイディが孤独感に耐えかねて家族を惨殺したこともあるような仕事であることを気にしている。しかし、教職の仕事を辞め定職のないジャックにとってはまたとないチャンス。

オーバールック・ホテルの閉鎖の日、トランス一家は住み込みで管理をするためにホテルにやってきた。ホテルの従業員は引き上げの準備に追われている。超能力「シャイニング」を持つトランス一家の息子ダニーは、同じ能力を持つ料理長のハロランに「237号室が怖い」と告げるが、ハロランは「何もない」と言い聞かせて去って行った。例年になく深い雪につつまれたオーバールック・ホテル、トランス一家3人だけの生活が始まった。

30歳を過ぎてから本作を見直すと、原作者のスティーブ・キングが映画に対して憤った気持ちが分かる気がする。要するに映画『シャイニング』ではとかくジャック・ニコルソン扮するジャック・トランスがなぜ狂気に暴走するのか理由が希薄なのだ。この映画を難解に思わせた理由でもある。

もちろん恐怖的を存分に高めるための画作りだとか、音作りは秀逸だ。その点で監督のスタンリー・キューブリックの才能が存分に発揮されているし、さしたる理由もなく密室の中で暴走し始めるジャックは『2001年宇宙の旅』のコンピュータ「HAL9000」ライクな冷徹さがあり、そりゃ背筋が凍り付く。ストーリーテリングが命の小説とは異なった映画ならではの恐怖演出にこりすぎた結果、作家にとっては話がめちゃくちゃにされてしまったわけだ。キング氏に酷評されてもそれは仕方ないだろう。

シャイニング

この食い違いは、オーバールック・ホテルに行く前から始まっている。映画ではトランス家族が暴走することが最初から分かり切っちゃっているのだ。強面のジャックは普通の市民としてみるには先入観が最初から入りすぎるし、なにより息子のダニーは既に精神的におかしい状態。しかも奥さんのウェンディは心が弱そうで、だんなのジャックにおびえているように見える。別にホテルに行くまでもなく、この一家はどこかネジが1本外れているのは明らかで、今にも狂い出しそうなのだ。「あんないい人がなぜこんなことを?」的なところは一切なく、「あいつはやりそうだったぜ」という展開なのだ。

しかし映画ではこの演出があってこそ、これから待ち受けている恐怖を観客に予感させ、ジャックが狂人に変身したときジャック・ニコルソンを起用したことが恐怖を十二分に引き立てることになる。小説と映画はそもそも根本が異なっているのだ。

その後、幽霊ホテルの悪霊がお約束通り、ネジの足りない一家を狂人へと変えるトリガーを引くことになるのだが、話はどんどんめちゃくちゃになっていく。なぜホテルは呪われているのか、グレイディはなぜジャックに家族殺害を求めるのか、ほとんど説明されない。だから、双子の女の子が出てきたり、バスタブからエレベーターから膨大な血が流れ出てきたり、果てはボールルームで幽霊たちの晩さん会が開かれているのか最後まで理解できない。

シャイニング

もちろんダニーの予知能力がそれを見させているのだとすることもできるだろうが、むしろこれらすべてが「よく分からないから怖い」という方向にキューブリック監督は全身全霊を傾けてしまったようである。そもそもダニーの予知能力はなんの役にも立たない。何のためにあるのかも疑問だ。単に、二重人格が恐怖を増強させているだけのものと言い切ってしまってもいい。これらの説明不足がたび重なり、この映画は難解なものとなり、伝説となっていった。

芸術と呼ばれるものはとかく議論を呼ぶような難解さを求めるものである。『シャイニング』も良くも悪くもホラー映画の傑作に祭り上げられてしまった。ちなみに、X51.ORGによると、ホラー映画の恐怖度を数学的に計算すると『シャイニング』が最も高い数値をたたき出すとか。キューブリック監督は原作をめちゃくちゃにしてしまったが、ホラー映画として最高傑作を作り上げてしまったのだ。

(es+u+cs+t) squared +s+ (tl+f)/2 + (a+dr+fs)/n + sin x – 1.
< es = 緊張感を高める音楽 , u = 未知要素 , cs = 主人公らが追われるシーン ,t = 罠にハメられそうな予感 , (squared = 二乗) , s = 衝撃度 , tl = 現実味 , f = 虚構性, a = 主人公の孤独さ , dr = 暗闇かどうか ,fs = 映像の雰囲気 , n = 登場人物数 , sin = 血や内臓 , 1 = ステレオタイプ度 >

とにもかくにも初見とは異なり、はまれる映画ではあると再認識した次第。

シャイニングの原作
スティーヴン・キング
シャイニングの監督・脚本
スタンリー・キューブリック
シャイニングの出演
ジャック・ニコルソン
シェリー・デュヴァル
ダニー・ロイド

『シャイニング』恐怖度No.1でも説明不足, 3.5 out of 5 based on 62 ratings

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