『第9地区』エビ星人とアパルトヘイトの奇妙な関係


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映画の評価(5点満点)

★★★★☆

プアーです。実は、『第9地区』は1カ月前から前売りチケットを購入して懐で温めていたといういわくつきの代物。せっかくのゴールデンウィークだというのに暗い映画館にこもってきました。

第9地区

さて、この『第9地区』、遭難したエビ星人がある日突然、南アフリカのヨハネスブルグに現れますよってな唐突な内容。随所で評判を聞いてアゲアゲなテンションで見に行ったせいか、映画が終わったらビックリするくらいヘトヘト。ぐったりです。それくらいエネルギーが詰まった作品だった。

最近の駄目なSF映画の傾向に、単にロボットや宇宙船を出したいがために無理やりの設定を持ち込み、その結果ディティールやアクションシーンはすごいけど肝心の話の内容はからっきしという作品があるが、本作は宇宙人が出てくる必然性があるし、その宇宙人がエビにそっくりという点も重要である。本来、映画の設定ってそうあるべきだよな。

『第9地区』は、差別をテーマに扱った映画だといえよう。もっといえば、南アフリカのアパルトヘイトがモチーフになっている。もしこれを白人が直接、黒人を差別するというふうに描いてしまうと観客は感情移入するのが難しいが、小汚くて不気味なエビ星人というメタファーを1枚かますことで「差別する側」の感情移入を容易にしている。この映画において「差別する側」の視点というのはきわめて重要な要素。まさしく本作のキモといってよい。観客がこの「差別する側」に立つという視点がないと、どうしても後半のクライマックスが盛り上がらず、見終わって残念なことになってしまっていたことは間違いない。

そして「差別する側の視点」に立つためのもう1つの仕掛け、これが主人公ヴィカスである。このヴィカスさん、本当に小役人風情で、企業の黒幕的悪人でも善良な市民でもない、いわゆる「普通の人」(いや正確には若干悪人風味)としての存在感が抜群である。これがもしレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットだったとしたら、その独特の個性によって不要な味付けが主人公になされてしまっただろう。特別な野望も正義感も持ち合わせていないヴィカスこそが、観客の手を握り、映画を一緒に歩いていく道案内として重要な役割を十分に演じ切っている。「監督、グッジョブ!」である。

もちろん、映画の設定上の問題や疑問点は沢山あるが、それでも佳作以上の内容に仕上がっている。映画のテイストはB級だが本作はB級映画の持つ持ち味を十分堪能できる。たまにはこういう変わった映画もいいのでは? 結構、オススメ。

第9地区の監督
ニール・ブロムカンプ
第9地区の製作
ピーター・ジャクソン
第9地区の出演
シャルト・コプリー
デヴィッド・ジェームズ
ジェイソン・コーブ

『第9地区』エビ星人とアパルトヘイトの奇妙な関係, 4.1 out of 5 based on 17 ratings

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