『精神』ドキュメンタリーの爆発力を見た


VN:F [1.9.22_1171]
あなたの映画評価は何点?
Rating: 3.2/5 (5 votes cast)
映画の評価(5点満点)

★★★★☆

プアーです。ご無沙汰していました。秋の夜長にガツンとしたものをいう訳で話題作をチョイス。チョット毛色が変わった映画を選んでみた。本作『精神』は、『選挙』で一躍有名になったドキュメンタリー映画監督相田和弘監督の2作目である。ちなみに、相田監督は自分の作品をドキュメンタリー映画とは呼ばずに「観察映画」と呼んでいる。

精神


劇中、挿入音楽、ナレーションが一切ないのだが、これは客観性の意思表示である。つまり「この映画は普通の映画とはチョット違いますよォ、覚悟しておいてくださいね」と、大げさに言えばこういうことである。確かに、実話を元にしたドキュメンタリーチックな映画は沢山あるが、ここまで鮮明に「生」であることを前面に押し出した映画というのはなかなか一般の人の目にはつきづらい。そのような意味でも貴重な映画であるし、監督の「意気や良し」といった感じである。

ただしかし、ただしかしィィである。

そこを差し引いても全体的に説明不十分な映画である。

それだけではない。編集やカットでもっと内容をスッキリさせられるし、 状況の説明がチョット不十分だったり、カットを通じて正直監督が何を言いたいのか、肝心な部分が見えないことも多い。そして、放り投げるようなラストは正直、誰が、何度見返しても?マークが付くことは想像に難くない。

とはいえ、精神病という課題と、ドキュメンタリー映画という手法のせいで、本作は静かながら強力な爆発力を生んでいる。精神病は、はた目から見てパッと見分からないという点において、他の病気とは違う。映画の撮影方法もあらかじめシナリオがあるわけではなく、撮影許可をもらいもらった瞬間から、カメラを回すため映り込んでいる被写体がアプローチした映像は、患者なのか正常者なのかまったく分からないのだ。

映画に出てくる患者も病人のオーラをまとっているが具体的な指摘は難しい。ただ、通常の人と違う世界観で生きてるのは間違いない。ベタな表現で申し訳ないが、違う国の住人というより別の星の住人と話しているという感じに近い。具体的に書くと、赤ちゃんの夜鳴きがうざいので口をふさいでいたら死んじゃいましたとか、感情の動揺が見られるべき告白を無表情でたんたんと語られるさまは、見ていて非常に怖い。それを、編集や監督の主観が混じるとはいえど、生で目の前で放り出されるのだから独特の迫力となって我々の前に現れる。衝撃である。

ただ、予告編を見る限り、非常にエキセントリックな印象受け楽しそうだが、映画の内容自体は極めて退屈。もし10年、15年前であればテレビでドキュメンタリー枠として放送していう内容である。もしテレビ業界の制約のせいで、本作レベルのドキュメンタリーが放送されないというのであれば、テレビではドキュメンタリーという概念が死んだと言ってもいいのではないか? 内容以外でもさまざまな問いかけをしている本作。秋の夜長にたまにはこういう映画もいいのでは。

冒頭、全世界ジャバザハットコンテストに出場したら、結構良い線に行きそうな女性が出てくるが、そこで笑うのは流石に不謹慎なので我慢我慢。何て言ったって子供が3年も会ってくれないんですから。

精神の撮影・録音・編集・製作・監督
想田和弘
精神の出演
山本昌知(「こらーる岡山」代表・精神科医師)

『精神』ドキュメンタリーの爆発力を見た, 3.2 out of 5 based on 5 ratings

タグ:

トラックバックURL(お気軽にどうぞ)