『人狼 JIN-ROH』異常な完成度の原画の集積


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映画の評価(5点満点)

★★★★☆

プアーです。早いもので気がついたらもう年末ですね。年末には落ち着いた映画を、というわけで独特なアニメを選んで見ました。20世紀最後の「ほぼセルアニメ」と言われる本作『人狼 JIN-ROH』。ソフトウェアとハードウェアの技術革新が進み、昔に比べて劇的にCGの導入費用が下がった現在、手間が異常にかかるセルアニメの劇場作品はひょっとしたら二度と作られないかもしれない。そういった意味で象徴的な作品である。

人狼 JIN-ROH

監督の沖浦啓之は、アニメーター出身で34歳で初めてメガホンを取った。『人狼 JIN-ROH』はその初監督作品である。アニメにおける監督業は「演出」と呼ばれるのだが、アニメシリーズで何度も演出要請があったにも関わらず、かたくなに断り続け、演出=劇場デビューというこだわりと意気込みが感じられる。それだけに本作もなかなか気合の入ったものになっている。

沖浦氏の略歴を見るとよく分かるが、彼は純粋なアニメーターであり、作画に対するこだわりが半端ではない。エヴァの庵野秀明やジブリの宮崎駿などは動きを得意としアクションによって観客を魅了するが、沖浦氏は静的な場面の切り取りが得意だ。少女が滑り台からすべるシーン、路面電車が画面をなめるようにカーブするシーンなど、何気ないワンシーンで人の情感に訴えるのを得意とする監督である。小津安二郎作品などの構図の引用も伺わせ、監督の勉強熱心さが伝わってくる。

作品の方は、”あの”押井守の脚本を中心に、溝口肇の音楽や超絶アニメーターの西尾鉄也、井上俊之を作画監督に配し、演出に『東のエデン』で話題になる神山健治を配してる。今から見れば、これは相当に豪華な顔ぶれである。キャストやスタッフを豪華にそろえても必ずしも上手くいかないのは映画業界の常識だが、本作に限っていえば良い方に転んだようである。押井守のガジェット優先なシナリオがいささか強引に感じるし、情景優先とはいえ映画全体のバランスを考えると、いくららなんでも場面展開が重過ぎる。もうちょっとテンポを上げてもいいのでは? と思わなくもないが、アニメ映画の歴史を語る上で重要な作品になるのは間違いない。

『人狼 JIN-ROH』は一枚一枚がイラストでも通用するような異常に完成度の高い原画の集積なのだが、特に橋の上で少女が髪を風になびかせるシーンはアニメ史上に残る白眉なので、見る機会があればぜひ注意して見てほしい。

人狼 JIN-ROHの監督
沖浦啓之
人狼 JIN-ROHの演出
神山健治
人狼 JIN-ROHのエグゼクティブプロデューサー
渡辺繁
石川光久
人狼 JIN-ROHのプロデューサー
杉田敦
寺川英和
人狼 JIN-ROHの脚色
押井守
人狼 JIN-ROHの原作
押井守
人狼 JIN-ROHのキャラクターデザイン
沖浦啓之
西尾鉄也
出渕裕
人狼 JIN-ROHの作画監督
西尾鉄也
人狼 JIN-ROHの音楽
溝口肇
人狼 JIN-ROHの声の出演
藤木義勝
武藤寿美
木下浩之
廣田行生
吉田幸紘
堀部隆一
中川謙二

『人狼 JIN-ROH』異常な完成度の原画の集積, 4.5 out of 5 based on 13 ratings

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