『冷たい熱帯魚』後頭がグラグラする衝撃作


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★★★★★

映画界はいつも完全な悪人を描くことに心をくだいてきた。そして、1991年、1つの伝説的な作品が誕生した。トマス・ハリスの原作をもとにした映画『羊たちの沈黙』である。それまでの悪人と違い、『羊たちの沈黙』に登場する悪人ハンニバル・レクターは、小さな老人で力も弱く、銃の扱いに長けているわけでもない。紳士風な老人がとんでもない悪人に描かれる。このことは全世界の映画人に衝撃を与えた。

冷たい熱帯魚

この『羊たちの沈黙』以降、さまざまな映画で大悪人レクターを超えようと意欲的な作品が撮られてきたが、この壁を越える作品はなかなかお目にかかれなかった。ぱっと出てくるキャラといえば、映画『ダークナイト』のジョーカーぐらいだろう。邦画に至っては、僕があまり見ないというのもあるが、「うーむ……」といった感じである。

さて、前置きが長くなったが、本作『冷たい熱帯魚』は、『羊達の沈黙』を多分に意識し、悪人ハンニバル・レクターの巨大な壁を超越しようとした意欲作である。『羊達の沈黙』に対抗するにあたり、1つの仕掛けというか、アプローチがなされている。それは、「本当に悪人ていうのは俗人を極めたような存在だよね」ということ。ある種、超越的な存在であるハンニバル・レクターとは真逆のアプローチがなされているのである。

これは、新しく、上手い考えだと思う。

モチーフとなる題材としては、埼玉愛犬家連続殺人事件を基にしている。この事件、近年の猟奇殺人事件では群を抜いた凶悪さで、日本犯罪史上、いや猟奇さを考えると世界レベルの凶悪さで、連日、ワイドショーやニュースで報道されてもおかしくないほどなのだが、なんとこの事件が注目されると同時に阪神大震災が勃発!! 大災害の影に隠れてしまい、世間の認知度は極めて低い。しかし関連著作をひろっていただければ分かるが、犯人の言動および行動は極めて異質であり、危険な魅力を放っている。

冷たい熱帯魚
そして、映画『冷たい熱帯魚』の中で、レクターに対抗するべく送り込まれた「俗人を極めた象徴としての刺客」が「でんでん」だ。おそらく検討段階で高田純次、温水洋一、山崎努など多くの名優が検討されたと思うが、画面を見て納得。言葉に表すのは非常に難しいが、なんともいえない顔をしているのである。少なくても「ああ、この人なら人を殺していてもおかしくないな」と思わせるだけの雰囲気を漂わせている。この得体の知れなさが、完全な悪人に近づいたキーポイントであろう。

完璧な題材と見事なまでの俳優のチョイス。この結果、レクターを超えようとする『冷たい熱帯魚』の大いなる試みは、一定の成果を収めてる。映画自体は蛇足も多く、内容も露悪的でどぎついので決して万人向けではないが、邦画の中では間違いなくここ十数年でトップクラスの出来栄えだ。見終わった後頭がグラグラするほどの衝撃を受けるのは間違いない。

「最近刺激が足んねーんだよ」という御仁はぜひ見てほしい。後悔しても知らないけど。

兎に角、スゴイ映画ではある。

冷たい熱帯魚の監督
園子温
冷たい熱帯魚の製作
杉原晃史
冷たい熱帯魚の出演
吹越満
でんでん
黒沢あすか
神楽坂恵
梶原ひかり
渡辺哲

『冷たい熱帯魚』後頭がグラグラする衝撃作, 4.0 out of 5 based on 5 ratings

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